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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(し)10号 決定

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

地方裁判所の一人の裁判官が刑訴法二四条により忌避申立却下の裁判をしたときは、これに対する不服の申立は同法四二九条一項に従い準抗告の方法によりその裁判官所属の地方裁判所に対してなすべく、同法二五条による即時抗告をなすべきものではないこと当裁判所の判例とするところである(昭和二九年(し)第九号、同年五月四日第三小法廷決定、集八巻五号六三一頁参照)。従って申立人等から東京高等裁判所になされた裁判官忌避申立却下決定に対する昭和三〇年一二月一〇日附の右即時抗告の申立は即時抗告としても通常抗告としても(同法四二〇条参照)準抗告としても不適法なものであり、同裁判所としては抗告申立の手続がその規定に違反したものとして同法四二六条一項前段により右抗告を棄却すべきものであって、抗告が理由があるかどうかの本案に立ち入って判断すべきではなかったのである。けれども抗告審では、抗告又は準抗告が不適法のものである場合にも又、それが適法ではあるが理由のない場合でも、すべて抗告を棄却する決定をしなければならない(同法四二六条、四三二条参照)のであるから、昭和三一年一月二五日の原審決定が本件抗告を棄却したのは結局正当というのほかない。原審の決定は不適法な抗告を不適法として棄却しなかった違法のものではあっても、最早やこの訴訟法違反を捉えて原決定に対して抗告を申し立てる道はなく(同法四二七条、四三二条、四二八条参照)、ただ同法四〇五条の規定する憲法違反若くは判例違反があることを理由とする場合に限り、同法四三三条により、これに対し当裁判所に特別抗告をすることができるに過ぎない。

よって本件特別抗告について調べてみるに、抗告理由は原審が記録の精査もせず抗告棄却の形式的事務的事件処理をした措置は憲法三七条に違反するという(憲法八二条違反の主張をも含むと解せられる)けれども、同法三七条にいう「公平な裁判所の裁判」とは偏頗や不公平のおそれのない組織と構成を持つ裁判所による裁判を意味するものであること当裁判所屡次の判例であり、原審の組織構成がこの意味で欠けるところのあったことは主張せられず又記録上認めることができない。そして原審は本件被告人佐山直外三名に係る被告事件記録を第一審裁判所より取り寄せそれが昭和三〇年一二月二〇日到着した後同三一年一月二五日原決定までの間にこれを精査したことは原抗告事件記録によってうかがわれ、又、原審は対審及び判決をしたのでないから、所論違憲の主張は前提を欠き、採用することができない。

よって刑訴法四三四条、四二六条一項に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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